下田ミステリーツアー最終日

七時半頃家を出た。新宿からは小田急の特急に乗って昼過ぎに下田に着いた。天気は予想に反して曇だった。

今回は「下田ミステリーツアー」と言うイベントの効果を見るために来た。駅構内のツアーデスク(と言うか受付)で問題兼解答用紙と地図をもらってヒントのある場所十箇所を回って答えを十個記入しそれぞれの答えをローマ字で書いた中央の文字を繋ぐと漢字四文字の答が分るというものだ。「書き下ろしのミステリー」と言うのに期待をしていたがこれが謎も何も無い二百字程度の文章でがっかりした。ヒントポイントの設定もこれで本当に良いのか?と首を捻るような場所もあった。

まず、南豆製氷に寄った。南豆製氷応援団のY副代表、H事務局長と石井裕也監督作品「君と歩こう」(下田のPRのために、下田ロケを強くお願いした経緯がある)の下田ロケーションで大変にお世話になったフクちゃんが詰めていた。二か月ぶりに中に入った南豆製氷はなんだか寂しげだった。久しぶりに入ったのでなんだかこれまでの南豆製氷とは違ったように見えたので久しぶりに内部の写真を撮影した。

南豆製氷を後にして櫛田家の蔵に向った。今日はNPO法人地域再創生プログラムのメンバーもたくさん来ているはずだったが、現場にはOプロジェクトリーダー、T君、もう一人のT君、O君の四人しかいなかった。理事長のSさんは既に帰京し、YさんとHさんは大伊豆旅館で東京から持ち込んだ原稿に朱を入れているそうだ。前日の「くしだ蔵・スタディプロジェクト×再創生スタディーズ」で設えた大テーブルをばらして、パネルを組みなおして展示ように模様替えをする作業を少し手伝ってから「老西門」で少し遅めの食事をしてから「らくら」「阿波屋いっぷく堂」などを回って「ミステリーツアー」についての聞き取り調査をしてみた。最終日の今日はともかく日曜日の昨日の人出は凄かったそうだ。「何人くらいがさんかしたんですか?」と訊ねると「三百人はいた」とのこと。三百人で「凄い」と言う沸点の低さに下田のおかれている現状を改めて思い知らされた。喜んでくれるのは良いのだが、目標はもっと高いところに置いて欲しい。

参加者の声としては「歩き回る時に順路があるのはありがたい」、「クイズ形式なので地元の人と話をするのが楽しい」と言う声が多かったそうだ。これは示唆に富んだ反響だと思う。観光案内板は設置してあるがほとんどはお寺の境内とかあまり人目につかない場所になる。ボランティア観光ガイドも熱心に活動しているが、観光客が「見たい」場所と言うよりはガイドが「説明したい」場所に傾いているようにも思えるし、アカデミック過ぎて娯楽性に欠けているようにも思える。ほとんどの観光客は勉強に来ているわけでは無いので、正確さに徹するよりは面白おかしさの要素を増やす方が喜ばれると思う。

見逃しそうな古民家などに景観を壊さない程度の案内板か、目印などで目立たせ、それについて地元の人であれば誰でも解説できるような「虎の巻」を用意すると良いだろう。「虎の巻」は地域住民への啓発にも利するだろう。また、沖縄の小浜島にあるリゾートホテル「はいむるぶし」でやっている「おばぁとゆんたく(世間話)」をするオプションツアーのようなものもお年寄りにとっては「話し相手」が出来、観光客にとっては商売っ気抜きの地元情報が聞け、双方にとって満足できるのではないだろうか?

「阿波屋いっぷく堂」にある「ミステリーツアー」の本部に顔を出して下田TMOのTさん、大横町商店会のMさんらと話をしているとNPOのYさん、Hさんが顔を出した。原稿の直しが難航しているらしい。蔵に戻るとパネルの模様替えが終ったところで、風呂と夕食に出かける四人に代わって留守番をする。雨は本降りになってきた。三連休の最終日と言うこともあって人通りも途絶えとっぷりと暮れたところでH女史が自転車で登場。ちょっと話をするうちに四人が戻ってきて、十二月のイベントについて慌しく立ち話をして、駅に戻り午後五時前の最終の特急「踊り子」で帰京した。
(よしだ)