第二回下田景観ワークショップ

この日は、東海道線が遅延して、ぎいりぎりに下田入りした。櫛田蔵に直行し、オウナーに挨拶をして蔵を開ける。先週、蔵の中のレイアウトを変えてパネル展示をしたが、その発表資料が二割がた剥がれて地面に落ちていたので、貼りなおす。両面テープだけではまた落ちると思い、画鋲を買いに澤村紙店に行く。何度も買物をしているので顔なじみになっているご主人(と言っても私と同じ年)がいきなり「あんた、バカなんだってねぇ」と言う。まぁ、バカには違いないが、何事かと思って聞くと、「太鼓祭りにはまって、金幣に付いて回ったんだって?」と言う。これまた同じ年の蔵のオーナーから酒の席ででも聞いたらしい。「下田ではバカは誉め言葉」と言うことで「ありがとうございます」と礼を言う。

資料を貼り直して、慌しく蔵に施錠してワークショップの会場の「阿波屋いっぷく堂」へ急いだ。定刻少し前に会場に着いたが参加予定者の大部分が既に集っていた。第一回ワークショップで清掃と調査を行った「加田本家」の構造や建築的特徴について、京大の神吉さん、静岡県建築士協会の滝さんが報告をし、京大と日大の大学院生が「加田本家」を例にして古民家の活用法について提案を行った。

調査の報告は主に計測結果についてで、構造については分らないことが沢山あることが分ったという程度に留まった。まぁ、これは石造建築物が少ない日本には事例もほとんど無いのだから止むを得ない。それよりは最後の自由討論が多少混乱気味ではあったが、談論風発で盛り上がったことだろう。

外が暗くなった頃にワークショップは終了し、市側が用意してくれた懇親会に参加した。市側が用意したと言っても借金まみれの下田市なので社会人は四千円、学生は無料と会費制だ。もちろん、市側がある程度の補助はしてくれているに違いない。懇親会では市の建築課の課長さんから「どうしてそんなに元気なのか?」と真顔で聞かれた。昼は「バカ」と言われ、夜は「元気すぎる」と言われ私は一体何なのか…。

宴たけなわの八時過ぎに賑わっていた宴席が静まり返るほどの大きな音がした。雹が降ったのだ。翌日、話を聞くと直径一センチ以上の雹で、地面に当って割れた破片がガラス戸を打つほどの強さだったそうだ。十時くらいにお開きとなり、私はH女史と「TATYUYA」に飲みに行き、軽く二杯ほど飲んで、次ぎは「土佐屋」に行った。土佐屋でさらに二杯ほど飲んでシンデレラタイムになったので一人で蔵に戻り、寝袋に入って眠った。この晩は比較的暖かかったので助かった。先週は相当冷え込んで、石油ストーブ無しでは寒かったそうだ。昼間見たら石油ストーブには灯油など残っていなかった。

(よしだ)